ドリル内製化プロジェクト

工具を自分たちで作る新たな「挑戦」

ドリル購入比率は年々増加している
利益率向上の為にはドリル購入費の削減が必要不可欠
しかし、ドリルは買うもの、高くても必要なら買うしかない…

この問題を解決する為に、4名の社員がドリルの内製化(社内生産)に挑んだ

プロジェクトメンバー

  • エンジニアリング課 マネージャー

    星 英昭(ほし ひであき)

    2012年入社

    プロジェクトマネージャー。機械の選定や使い方のサポートなども担当。

  • 工具係 アシスタントマネージャー

    Prayuth Pakkete(プラユット・パッケテ)

    2007年入社

    工具の発注管理と工具の生産管理などを担当。

  • 工具係 スーパーバイザー

    Niran Sang-aroon(ニラン・センアルン)

    2003年入社

    工具研削盤で生産する工具の設計を担当。

  • 工具係 エンジニアスタッフ

    Adisak Saengkong(アディサック・センコン)

    2017年入社

    生産する工具の設計や、加工した工具の現場テストやデータまとめを担当。

プロジェクトの目的

当社ではこれまで、工具は社外から全て購入していましたが、工具の購入費は毎年増える一方です。現在ドリルだけでも購入数は年間6000本にも及んでおり、利益率を上げるためには、工具の購入費の経費を減らす改善もしていかなければなりません。しかし、工具を使う量を減らすのは難しく、限界もあります。
通常の会社では工具を作れると分かっても、設備投資や人材の問題から作れない事がほとんどですが、当社ほどの購入量があれば、多少設備に投資がかかっても回収できる可能性が高いのではないか、また既に社内に工具を研磨して使うという文化があるため、当社の社員なら違和感なく作れるのではないか、というところからこのプロジェクトを始めました。

ドリル製作の要は「砥石」製作
トライ&エラーを繰り返して実現

ドリルを作成するには、まず「砥石」という金属や岩石などを切削、研磨するための道具を用意する必要があります。砥石自体は円盤の形をしており、円盤の中に細かい曲線があり、曲線の大きさや角度によってドリルの形が変わって来ます。その曲線の大きさや角度がドリルの世界ではノウハウになり、ドリルメーカーに訊ねても教えてくれません。それは自分達でトライ&エラーを繰り返しながら、やってみるしかありません。
普通はそこでお金と時間がかかるので、こうしてドリルを内製化する会社があまりないのは、そこが一番大きな要因です。
砥石は、それ自体にお金をかけないように、シミュレーションソフトを購入し、実際にこういう形の砥石にしたらどういう形になるかを3Dによってパソコン上で確認できるようにしました。そのソフトも結構な値段がしますが、ソフトのあるなしでのドリル製作コストを数値で表し、「だからこのソフトが必要です」と上司を説得して購入を承認してもらいました。
ソフトのプログラムで確認した結果と、実際に機械で作った結果には誤差がないため、ソフトを購入したお陰で砥石を無駄にしたことは一度もないですね。

高品質のドリルの内製化に成功、
プロジェクトに携われたのは誇り

シミュレーションソフトで砥石の設計をし、作った工具は実際に製作現場に持って行って、テストをしてデータを取ります。
もし作っているドリルの損益分岐点があまり出ない場合は、もっと効率が良く、コストに効果があるドリルを検討します。
実際に社内で作ったドリルの品質は、検査の結果、社外からの購入品と同じレベルであることがわかりました。
今まで、作りやすい簡単なドリルは手動機で製作したことはありましたが、今回工具研削盤を使って作れるようになったことは誇りに思っています。
工具を購入するには、10日間以上のリードタイムが必要でしたが、社内で作成するとリードタイムが半分くらい短くなり、お客様の緊急発注の対応ができるようになるなど、ドリル購入費の経費削減だけではなく、ビジネスチャンスも増やせていると感じています。
また色々なことを分析してどんどん新しいことをするのはとても楽しいですね。

想定以上のスピードで実った成果
再研磨の内製化にも成功し、維持コストの削減にも貢献

計画では損益分岐点(この場合の損益分岐点とは(設備を導入しない場合に発生する費用)と(設備投資額+ランニングコスト)が同額になる点)を3年で想定していましたが、大幅に前倒しして2年で達成することに成功し、挑戦を見事に成し遂げ、評価できるプロジェクトになりました。
想定より1年早く当初目標を達成したのは、月に生産できたドリルの量が予定より多かったことが要因ですが、それを実現させたのは、メンバーのプラユットさん、ニランさん、アディサックさんの3人が機械の属性をよく理解し、どういう製品ができるか考えながらどんどん作れる製品を増やして行ってくれたからだと思います。
また、今回ドリル内製化だけではなく、再研磨の内製化もできるようになりました。
再研磨というのは、一度使ったドリルの先を削ってまた使えるように研ぎ直しすることです。今まではそれも社外に出していましたが、社外に出す際は、取り残しがないように一回で削れる量を多くするため、結構な量を落としてしまいます。
それを工具研削盤の導入によって自社内でできるようになり、最小限に削りを抑えることによって、通常5回しか使えないドリルが10回使えるようになり、維持コスト削減という効果もありました。社員に対しても、「再研磨は研磨量を最小限にしてドリルを大事に永く使う」という気持ちも養えたと思います。

今後の新たな挑戦へ

今内製化できているのは10%〜20%間くらいで、その間を行ったり来たりしています。
内製化できる製品を増やすために別の機械を購入する計画も進んでおり、2020年までに内製率を25%にするのが目標です。
更なる将来の目標は、加工メーカーとして長年の経験と技術を取り入れた、自社ブランドのオリジナル工具を製作し、外販することです。私達の挑戦はこれからも続いていきます。

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